5月28日、「みんなの銀行」がサービス開始した。スマートフォン用アプリを公開し、個人利用者を対象とした口座開設の受付を開始した。
みんなの銀行は、ふくおかフィナンシャルグループの子会社で、既存のインターネット銀行とは一線を画す「デジタルバンク」を目指す。デジタル起点の新しいサービスを提供し、口座開設からATM入出金、振込など、全てのサービスがスマートフォン上で完結できる。
28日にiOSとAndroidのアプリを提供開始し、口座開設を受付。普通預金口座の開設と同時に、貯蓄預金口座の開設とバーチャルデビットカード(カードレス)の発行が行なえる。
口座開設時に提供するのは、「普通預金【Wallet】」と「貯蓄預金【Box】」「デビットカード【Debit Card】」「お金の管理【Record】」の各サービス。
Walletでは、キャッシュカード・現金を持ち歩くかずに、支払いから、振込み、ATM入出金まで、スマートフォンだけで完結できる。
ATMは全国25,000台のセブン銀行ATMに対応し、出金手数料は110円/回、他行あての振込手数料は220円/回。後述のプレミアムサービス会員(600円/月)は、他行あての振り込みが10回まで、出金は月15回まで無料で利用できる。みんなの銀行のユーザー間では、QRコードの表示・読み取りにより、振込できる。
Boxは、貯蓄預金の中に仮想の「ボックス」を作成できる。お金を整理・整頓する「箱」のイメージで、目的に応じて使い分けが可能。最大20個のボックスを作成でき、Walletからドラッグ&ドロップで操作でお金の移動が行なえる。「毎日積立で100円、月次で1万円」など細かな条件設定での積立にも対応し、自由な貯蓄スタイルを選べるという。
Recordは、自分が使ったお金を振り返るサービス。みんなの銀行以外の銀行口座やクレジットカード、電子マネーなどの残高や明細を一覧で確認でき、お金の使い方を振り返れる。
マネーフォワードとの提携により、1,300以上の金融機関と連携。取引履歴にハッシュタグ # を付けて[#仕事][#ランチ]など用途に合わせた分類も行なえる。
5万円立て替えなど月額600円のプレミアムサービス
みんなの銀行の特徴といえるのが、月額600円の「プレミアムサービス」。
通常の口座は、無料で利用できるが、月額料金を支払うことで、キャッシュバック料率のプラスや手数料の優遇などを受けられる。
具体的には、デビットカードキャッシュバック率が5倍の1%となるほか、Recordの一括更新に対応。また、ATM出金手数料が月15回まで無料、他行への振込手数料が月10回まで無料となる。
さらに、最大5万円の当座貸越枠【Cover】(あるとき払い)が利用可能。
Cover(カバー)は、口座残高が不足しているときに最大5万円まで自動的に足りない分だけを立替えるプレミアムサービス限定の追加オプション。あらかじめ契約していれば、急な出費や支払があっても最大5万円まで自動で立替えてくれる。
なお、プレミアムサービスは1年間無料で展開する。
お友だち紹介プログラム(リファラルプログラム)も実施。紹介した友だちがみんなの銀行口座を開設することで、紹介する人・紹介された人それぞれに現金1,000円をプレゼントする。
デジタルネイティブ世代の新しい銀行を
みんなの銀行がターゲットとするのは、1981年以降生まれのデジタルネイティブ世代と呼ばれるミレニアル(Y世代/24~38歳)、Z世代(23歳以下)。、
「デジタルネイティブ世代にフォーカスした理由について、みんなの銀行 横田浩二頭取は、「現在の就業人口では30%台だが、2030年には6割を超えてメインの顧客になる。一方、この世代には銀行に出向いて金融商品を買う習慣はなく、そこに向けた新しいチャンネルを作る必要がある。また、銀行はユニバーサル、万人向けのサービスにこだわりすぎたのではないか。そうすると『誰にも支持されない』サービスになってしまう。年代にこだわりすぎるのではなく、シニアでもデジタルに慣れた人は多い。年齢を問わずにデジタルサービスに近い人。そして、今、金融から少し遠い人に振り向いてもらいたい」と説明した。
当面の目標は、1年目に顧客数40万人、3年目に120万人。みんなの銀行が28日13時にスタートし、16時までで約1,500口座が開設。「1年で40万人が1年の目標なので、3時間で非常に多くの人に使っていただいており、SNSでもシェアされている。滑り出しは極めて順調」(永吉健一 副頭取)という。
今後のマネタイズについては、永吉副頭取は、「まずはローンを考えている。フリーローンのほか、車や教育などの目的型のローンの開発に着手している。ただ、これだと既存の銀行のサービスの域を出ない。サービスを開始して『こんな機能がほしい』といった声が上がっているが、『リアルカード』とか、『後払いのクレジットカード』とか、『保険』などの声もでてくると思う。利用者の声と我々のサービスの親和性の高いものを考えてやっていきたい」とした。
また、事業者向けに銀行サービスを提供する「BaaS」も次のステップとして強化していく。
なお、海外の「チャレンジャーバンク」では収益化に苦戦している企業も多い。
横田頭取は、「海外のデジタルバンクも、銀行が作った会社は収益的にも一日の長がある。特にローンのビジネス。今現在は、ローンの機能はごく一部で、Coverやプレミアムサービスでの収益化は考えておらず、新しいサービスの基本と考えている。1年目は収益は厳しいが、2年目からはローンのUI/UXを磨いて収益化を加速し、3年目に収益化を目指す。BaaSについても、その後に収益をもたらすと考えている。まずは、画期的なサービスを作ることに注力したい」と語った。